5月の下旬、蚕を育て、座繰りによる糸作りをされている
『蚕絲館』さんのもとを訪れました。
お蚕さんは、繭になるまで4回眠って脱皮をするのですが、
ちょうど今眠り中とのことで、お時間を設けていただくことができました。
写真を見ると大きく見えますが、
実際はこんなくらいです。
眠りから覚めて、お腹が減ったひとは、『えさくれー』と言ってくびを振っています。
かわいいです。
『蚕絲館』さんでは、若いご夫婦ふたりで、座繰りの糸を作って販売してらっしゃいます。
座繰りとは、繭をお湯で煮て、枠に生糸を巻き取ってゆく技のことです。
機械製糸よりも、ふんわりした風合いになります。
養蚕を始められたのは、
『このままだと、繭すらも手に入らなくなる』 という
危機感からだそうです。
お話を聞いて、 もはやそんな状況!? と、びっくりしました。
『まゆと生糸は日本一』とは、群馬県民なら誰もが知る
上毛かるたの『ま』の札ですが、県内の養蚕農家は本当にもうわずかしか残っておりません。
それでも『まゆと生糸は日本一』という国産シルクの現実。
現在流通しているシルクは、外国産のものが圧倒的で、
日本産のものは、本当に細々~~~・・・、となっているのが現状です。
現在は、中国産のものも手に入らなくなり、ブラジル産や、ウガンダ産の生糸が
むしろ良い質のものがある、とのことでした。
ウガンダ!
どんどん人件費の安い国へと移行していった結果だそうです。
それで、いいのか、にっぽん!?
現在、食の自給率は、40%を切っています。
繊維に関しては、ほぼゼロに等しいのではないでしょうか。
『国産にこだわる必要はない』と、大勢の方がおっしゃいます。
実際、国産にこだわれば、もはや生活が成り立ちません。
でも、このままで本当によいのか、と思います。
フランスは、先進国でありながら、多くリネンを生産し輸出しています。
ウールに関しても、小規模農家が生産するらしいウールが、
そんなにびっくりするほどではない価格で手に入ります。
日本と何が違うのでしょう??
糸を作ること、布を作ること、それはかつて、生きる上で
欠かすことのできない『わざ』でした。
食べずに生きてゆける人はありません。
でも、何も着ずに生きてゆけるひとも(本当の裸族とかのぞけば)、またいません。
調湿性にすぐれた絹は、多湿のこの日本でどれだけの多くの人の命を包み守り育ててきたことでしょう。
親から子へ、気の遠くなるような古い時代から受け継がれてきた
糸を作り、布を作るわざ。
確かにそれが失われても、今の時代は生きて行けます。
突然ですが、日本から日本語が失われても、日本人は生きてゆけるでしょう。
でも、日本語がなくなってよいという人はいないと思います。
それは、遠い過去からはるか未来まで、この国で生きる知恵や生き方を
伝達し、日本人を日本人たらしめているひとつの命脈です。
▲絹じゃないのですが。。。
手から手へ、時をこえて受け継がれたわざは、言葉ではない言葉なのではないかと思います。
親から子へ、ひとからひとへ。生きるために受け継がれた手仕事のわざ。
いったん失われてしまえば、復活させることは、容易ではありません。
養蚕農家は、たいへんな苦労をし蚕を育て
繭を出荷をし、採算などまったくあわない赤字の状態とのことです。
現在、補助金が出ているそうなのですが、それでも、です。
そんな危機的な状況の中、蚕を育て、糸を作ってらっしゃる
ほんとうに尊い仕事をされているなあ、、、と感動したので
ご夫婦でならんでいるところを写真撮らせて頂きたかったのですが、
ご主人が『おれが撮るよ』と撮る側にまわられたため、
むだにフセが写っています。すいません。
自分にできることってなんだろう。
ずっと考えています。
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