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命を生み出す木~桑の話~

東の果てには『扶桑(ふそう)』という巨樹があって、そこには10の太陽が宿り、日替わりで天を巡っていた。

 

そういう言い伝えが、古代の中国にはありました。

少なくとも二千年以上前には、存在していた言い伝えです。

10の太陽の名は、「甲」「乙」「丙」「丁」「戊」「己」「庚」「辛」「壬」「癸」。

 

この名は今も暦の中に生きています。

三千年以上前、『商』という王朝が、ありました。

中国で実在が確認出来る最古の王朝です。

 

歴代の商王は、「甲」「乙」「丙」「丁」「戊」「己」「庚」「辛」「壬」「癸」、

これらの太陽の名を名乗りました。

 

『商ショウ』=『桑ソウ』なのだと、中国の古代詩を専攻した学生時代、

担当教授の授業で繰り返し聞かされました。

 

近しい音を持つ言葉は、意味を共有し合う場合が多いのだそうです。

『商』とは、女性の形をかたどった文字。赤ちゃんが生まれてくる穴と、宿した子供を育むことを表しているという説があります。

 

女性は命を宿しはぐくむ豊穣のみなもと、

そして桑もまた、命を生み出す生命樹と考えられ、商という王朝はそれを体現するものであったと。(ちなみに商は滅ぼされ、国を失った末裔が諸国をさすらう『商人』になったと言われています)

 

では、なぜ桑がそれほどに神性視されたのかというと、桑が蚕を養う木であったからです。古代 各王朝の王妃は国の繁栄を祈って養蚕を行いました。蚕を養う儀礼が豊穣をねがう祈りそのものでした。

軽く、やわらかく、暖かく、命を包み守る『衣きぬ』の恵み。それがどれほどの命を育んだのか、私たちにはもうわからない、遠いものとなりました。

 


 

お蚕さんを養うところから、糸にし、織って羽織るものができるまで。

ton-caraでは、そんな体験をしてほしいと思っています。

むかしのひとが、祈るように、育て、糸にし、織り上げ、かけがえのない大切な命を守った衣。

今は遠くなってしまった、そんな気持ちが、ちょっとわかるかもしれない、、、なんて思っているのです。